ソフトバンク株式会社 人事総務統括 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 部長
杉原倫子

1997年 日本テレコム株式会社入社。 保険代理店業務に従事した後、新規プロダクト開発および営業推進を担当。2003年に人事部門へ異動。人事制度全般の企画・運用や人事システム構築の統括を経て、 2016年から人材開発の責任者としてソフトバンクユニバーシティ、ソフトバンクイノベンチャーなど、人材開発領域の各種施策を担う。 2019年4月より採用責任者としてソフトバンクらしい攻めの採用の実現に向け、地方創生インターンなどユニークな施策を牽引する。

王道のコースで埋もれてしまうよりも、自分が輝けるニッチな領域を選びたい

 
 

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ー最初に、日本テレコムにご入社される前のご経歴について少しお聞かせください。杉原さんは幼少期を広島県で過ごされ、滋賀県の大学に進学されたとのことですが、この意思決定の背景にはどんなものがあったのでしょうか。
 
 
中学・高校は地元のいわゆる進学校に進んだのですが、そこで驚くほど賢い人たちに囲まれ、自分の能力の無さを嫌というほど実感しました(苦笑)。

だから、大学を選ぶ際には、大勢の人の中で埋もれてしまうよりも、自分の個性が輝く場所に行きたいなと思ったんです。学生数も多くなかったので、こぢんまりとしたコミュニティでのびのびとした学生生活を送ることができたので、良い選択だったと思います。

よく上司や周りの人からは「杉原は誰にでも遠慮なくコミュニケーションをとるよね」と言われますが、思えば昔から誰にでも遠慮せずに話しかけにいくタイプでした。

と言っても、その人と仲良くなりたくて話しかけるというわけではなくて、行動の観察対象として興味があったんです。

「何故一人で勉強しているのに楽しそうなのだろう?」とか。行動原理と表現するのが適切なのか、今で言う「モチベーション」が人それぞれ違うということを観察していたのか(笑)。

加えて昔から「自分は自分、人は人」と考える性質で他者への興味・関心は薄いタイプだったので、一見コミュニケーション上手に見られがちですが、実は全く相手の立場や心情を理解できていないことも多く、今でも失敗ばかり(笑)。

多様な意見や価値観があるという前提でコミュニケーションをしなければ信頼関係を築くことができないという、社会人として人事パーソンとして、とても基本的なことを人事領域の仕事をするようになってから身に染みて学びました。
 
 
ーその後、新卒で日本テレコムに入られたきっかけはなんだったのですか。
 
 
1997年当時は、「情報・通信」という言葉がちょうど出てきたころで、なんとなく未来があるような気がしたんですよね。この領域に関わっていれば、食いっぱぐれることはないだろうと(笑)。
 
入社後は、周りの同期がみんなコアの通信事業の営業職を選ぶ中、私は附帯事業の保険代理店業務を希望しました。経済学部出身のため金融関連の仕事に興味があったというのもありますが、王道のコースで戦える人間だとは思っていなかったのが大きな理由でした。
 
周りと同じ道を選んで埋もれてしまうよりも、ニッチな領域で自分が輝ける場所を選ぶ、というのは学生時代から変わっていないですね。
 
 

「絶対に勝機を逃さない」ソフトバンクカルチャーに惹かれた

 
 
ーその後、新規事業部署を経て、2003年に人事へご異動されたとのことですが、これは杉原さんのご希望だったのですか。
 
 
そうです。20代後半に差し掛かり、一度立ち止まって、自分は会社にどんな貢献ができるんだろうと考えてみました。「今から営業に戻っても、同期に追いつくには相当な時間がかかる。

それであれば、あまり誰も選ばない道を選ぼう」と思い、ジョブ・ポスティング制度を利用して管理部門へ異動しました。
 
異動後は、中途採用から出向社員や間接雇用社員の受入調整などを中心に幅広く担当させてもらいました。

異動から1年後の2004年に日本テレコムがソフトバンクに買収されたので、ソフトバンクから大量にやってくる人員の調整、準備などをこなすだけでも目が回るぐらい大変でした。
 
 
ー日本テレコムからソフトバンクへ会社が変わったことに対して、違和感はなかったですか。
 
 
それが全くなかったんです(笑)。最初はソフトバンク特有の「絶対に勝機を逃さない」というスピード感を見て不安に思ったことはありましたが、いざ一緒に働いてみると、会社が良い方向に変わるんじゃないかという期待の方が大きくなっていきました。
 
2006年からは人事制度に携わるようになり、ソフトバンクBB、日本テレコム、ボーダフォンという3つの異なる会社が仕組みやルールを通して一つになっていく様子を実感することができたので、大変ながらもやりがいを感じられました。
 
 

目指すのは、“自分の成長”よりも、“社会や会社に貢献し続けられる人間であり続けること”

 
 
ー2019年の春から採用に異動されて、どのような所感を持たれましたか。
 
 
企業が学生を選ぶのと同じように、学生からもソフトバンクを選んでいただけることはとてもありがたいですし、採用を行う上で今はとても恵まれた環境にいると思います。

一方で、我々の最重要ミッションでもある、「次世代の経営者となるビックパーソンの採用」というのは、やはり簡単にはいかないなと実感しています。ソフトバンクを希望してくれる人の中だけにビックパーソンがいるわけではないので。

ただ、うちの採用チームは営業やエンジニアなど、さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが集まっており、ソフトバンクという会社を語るときの熱量とリアリティは大きな武器になっていると思います。

これらの武器を生かして、将来会社をひっぱっていくビックパーソンを採用しなければと考えています。
 
 
ー人事制度、人材開発、採用を経て、今後杉原さんが挑戦されたいことはなんでしょうか。
 
 
実は私、将来どんなポジションで仕事をしたいか、といったことにあまり興味がないんです(苦笑)。それよりも、どんな立場であれ、社会や会社に貢献し続けられる人間でありたいと思っています。

その点で言うと、学生が社会に出る前にもっとキャリアについて考える時間を増やしていきたいですね。

今後本当に先の見えない時代に入ってくるので、「自分のキャリアは自分で決める」ということが必須になってきますが、今の教育や就活では、そのために必要な情報が足りていないと感じます。

例えば大学時代だけでなく、中・高校時代からキャリアについて考えたり、大人とディスカッションしたりする時間を作ることができれば、その経験が源流となり、働くことに対する選択肢はもっと広がっていくはずです。

私も人事として、学生がファーストキャリアを選ぶ際に役立つ仕組みづくりに携われたら嬉しいです。

あとは、ソフトバンクという環境で人事を行うことを存分に楽しみたいと思っています。
ここまで新しいことにバイアスなくチャレンジさせてもらえる環境ってすごく貴重だと思うので。それをメンバーにも伝えて行きたいですね。
 
 

大きなことを始めるには、まずは一人仲間を見つける

 
 
ー最後に、これから採用に向き合う人へ伝えたいことは何ですか。
 
 
他社の人事の方とお話をすると、「それってソフトバンクさんだからできたことですよね」と言われることが多々あります。でも、全然そんなことはないんです。

例えば、昨年度から導入している面接動画のAI判定に関しても、開発・導入に至るまでの過程はものすごく大変でした。色んな人を説得し、お金をもらい…(苦笑)。

でも、絶対やった方がいいと誰しもが思っていたから実行したんです。

もしやりたいと思うことがあれば、まずは仲間を見つける、次に小さく実行する、そしてファクトを掴み、そのファクトをもとに賛同者を増やす。

どんな大きなプロジェクトも、結局はこの地道な作業の繰り返しだと思います。

なかなか社内で理解が得られない状況に置かれていたとしても、まずは一人、共感し賛同してくれる仲間を見つけることから始める。それが大きなことにつながっていくはずです。
 
 
ー本日はありがとうございました。
 
 
編集後記:
「あまり人に話せる経験もないのだけれど…」というお言葉を添えつつ、広島、滋賀で過ごされた学生時代から現在に至るまでの道のりを、飾ることなく、ありのままの言葉でお話いただいた杉原さん。「王道で勝てないなら、自分が輝くニッチな場所を選ぶ」、「大きなことを始めるには、小さなことしか始めるしかない。それはソフトバンクでも同じ」というしなやかで力強いメッセージは、採用に限らず、新しいことに挑戦する場面で力をくれる言葉だと感じました。